監督回想録

2016.07.17

【第3話】 ロックンロールな僧侶が発案したアースキャラバン

連載3回目で、自己紹介してないことに気づきました(笑)
普段は、広告代理店でCM映像制作をしております、鈴木聡と申します。
なんで、そんな人間が、世界平和イベントのドキュメンタリー映画を監督したのか?

その経緯をお話しします。
話が入り組んでおりまして、うまく説明する自信はないのですが(笑)
もしかしたら、その経緯が、アースキャラバンがどんなものかを理解していただく手助けになるかもしれません。

僕は仕事とは別に、プライベートでタオ指圧という指圧を学んでいます。
タオ指圧は、浄土宗の僧侶・遠藤喨及(りょうきゅう)さんが、四半世紀にわたる経絡の研究や、武道による気の修練、僧侶としての仏教修行の末、体系付けた指圧です。その効果の高さから、世界中で学ばれてます。

そのタオ指圧の世界大会が2013年にタイのパタヤで10日間にわたって行われました。
最終日、ヨーロッパのメンバーから「戦後70年目(2015年)に、ヨーロッパの第二次世界大戦の傷跡地を巡礼するツアーをしたい」という提案がありました。
それを聞いた喨及さんが「中東はこれから平和にならなきゃいけないところだから、日本からヨーロッパを経て中東まで行くようにしたら?」と発案したんです。

この喨及さんというのがまた、思いついたことを何でも実現する行動力の塊みたいな人で、翌年には一人でイスラエルとパレスチナまで一人で交渉しに行きまして。ガザ空爆中にですよ(笑)
なかなかロックンロールなお坊さんです。
(実際、メジャーレーベルからCDを何枚も出しているプロミュージシャンでもあり、映画の中でもギターを掻き鳴らし、リコーダーも吹いています)

アースキャラバン代表 僧侶・遠藤喨及(りょうきゅう)さん

パレスチナのフェスティバルでの演奏 
映像はこちらでご覧頂けます

で、パレスチナで毎年4日間大きなフェスティバルを開催している団体に、「フェステバルの開催日を広島原爆投下日8月6日に、終了日を長崎原爆投下日8月9日にしてくれたら、日本から原爆の残り火を持っていく」と約束してきたんです。
後で知ったんですが、その時は原爆の残り火がどこにあるかも知らなかったそうです(笑)

普通こんなこと勝手に決めて来ちゃう上司とかいたら、
最悪じゃないですか?
できるあてもないのに。
でも喨及さんは、実現するためにできることなら、何でも自分でやって動きまくるんですね。
そういうのをそばで見ていると、周りもだんだん感化されてきて、動き始めるんです。自主的に。

タオ指圧を学んでいる人は多岐に渡っていて、
施療師を目指す人はもちろん、すでに指圧師として開業されている方も学びに来ますし、なんと西洋医の方までいらっしゃいます。
また、医療従事者だけでなく、ありとあらゆる職業の方がいらっしゃいます。

で、1年間、みんなが一人一人自分にできることを生かして、アースキャラバンを創っていったんです。

行政書士の方は、航空会社や国土交通省に申請書を書いて「原爆の残り火」運搬実現のため奔走し、
WEBデザイナーの方は、夜なべしてホームページを作り、
筆まめな方は、片っぱしから有名人に手紙を送り賛同者を増やし、
料理が上手い人は、イベントで白砂糖無添加で体に良いお菓子を出し、
まさにSMAPの「世界に一つだけの花」状態です。
(♪一人一人違う種を持つ、その花を咲かせることだけに一生懸命になればいい)
そういう流れで、CM映像制作を仕事にしている僕が映画監督をしたというわけです。

いつしか、タオ指圧を学ぶ人だけでなく、世界中のありとあらゆる人を巻き込んでいきました。

よくまあ、たった1年で、原爆の残り火をイスラエル・パレスチナまで運び、 (9.11以降、航空会社は「火」の運搬について非常に厳しく、「広島市」が申請しても許可されなかったそうです!)
日本、ヨーロッパ、中東でイベントを開催することができたなぁと。

閉会式では、紛争中のパレスチナのPLO(パレスチナ解放機構)幹部と、イスラエルのユダヤ教ラビが同席する機会まで作ってしまいました。

アースキャラバンができるまでを追ったドキュメンタリーがあったら、本当にスリリングで面白いだろうなという奇跡の連続でした。

あ、そのドキュメンタリーも撮ればよかった!(つづく)


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